黒板は、最も古くからある教育メディアの一つです。多くの授業は、黒板を介して行われています。
教師は黒板へ書き込むことによって知識を提供し、教育上必要な情報を伝達しています。そして、生徒の反応を見たり、理解度を確認する為に、生徒に考え方を書かせたり計算させたりして必要な補足的な指導を行っています。一方、生徒は黒板への書き込みを通じて、自己を表現したり、仲間達の意見を集めたりまとめたりします。
黒板はビデオ、テレビなど他の教育メディアに比べて感情移入がしやすいと言われております。生徒達は黒板に向かう教師の後ろ姿、黒板に書き込む筆勢、説明の語気などから事柄の重要性を感じとったり、指導に対する熱意、感情を読み取ったりしています。
このように、黒板は教師と生徒、生徒と生徒とを結び知識や心を通わすことのできるヒューマンインターフェースとしての役割を担っております。黒板を介した教師と生徒のコミュニケーション。それは、授業の流れの中で生み出されるエッセンスでありその場に臨んでいる教師や生徒のそれぞれにとって、常に新鮮で緊張感に充ちあふれています。その意味で教師、生徒そして黒板が三位一体となってはじめて授業が成立し、いずれが欠けても授業が成立しないと言っても過言ではありません。
フランス人によってアメリカに伝えられました。当時アメリカは、石盤さえ使用されていませんでした。 | |
明治時代に、日本で黒板の原点ともいえる「塗板」が誕生、主に寺子屋などで使用されますが、黒板より掲示板に近く小さなものでした。 | |
明治5年、初めて日本で学校制度のスタートと同時にアメリカから「ブラックボード」が大学南校(東京大学の前身)の教師であったアメリカ人のスコットによって日本に持ち込まれました。 | |
明治7年、日本で新しい授業制度がとられはじめ、明治10年頃には全国に黒板が広がりました。名前も「ブラックボード」からそのまま翻訳されて「黒板」に変わりました。 | |
明治7年~9年、初めて国産品の黒板が製造される。当時は、簡易的なものとしては、墨汁を塗った上に柿渋を上塗りしたもの、または硫酸鉄と煎液を混合して塗ったものでした。 | |
大正初期、それまで仏壇屋さんや、漆工芸屋さんなどが作っていた黒板も、日本の代表的な黒板専業メーカーが出現し、技術の高さから朝鮮や満州など海外にも多く知られました。 | |
戦争により、黒板に塗る命ともいえるべき輸入品の漆が入手困難となり、黒板メーカーが材料調達に苦労した時期でした。 | |
昭和27年、資材の調達も含めて、日本工業規格表示工場の許可をめぐって黒板工業連盟を結成する運びとなり、昭和29年、JIS規定が制定され、塗面が黒からグリーンに変わりました。 | |
昭和30年ごろから木造から鉄筋の学校が多く作られ黒板が全国的な規模で広がりました。 | |
現在の黒板は以前より簡素化し、以前は手作業で製造されていた研ぎ出し黒板ですが板面は焼付け塗装・ホーローが主流になってきています。フレームが木ワクからアルミのワクに変化し、より使い易く、耐久性に優れた黒板になりました。 |
地板材は当初、杉の8分板(24m/m)の裏に吸付桟(松材及び絵材)を取り付けてカンナで削りおろし、また死節を削り取り除き6分板(18m/m)位に仕上げていました。 | |
昭和20年半ば過ぎにはシナベニヤ合板6mmができ、続いてラワンベニヤができる。周囲裏桟(杉板)で補強する。こうして仕上がった黒板下地は寒冷沙やクラフト紙を使った下地処理が必要で、その良否が黒板の品質を左右しました。 | |
スチール鋼板を下地にした黒板が普及しはじめた。最初はボンデ鋼板にラワンベニヤ合板を圧着した黒板が出来上がる。スチール黒板の普及は下地処理を必要とせず、直に仕上げ塗料を塗布又は抜き付けることで、より精度の高い品質と製品の合理化を図ることが出来又磁石(マグネット)が使えるという画期的な黒板に変革しました。 | |
昭和40年になると、大手メーカーのカラー鋼板ラインを使って、黒板塗料を塗布したスチール焼付け黒板が出来上がり、全国的に普及しました。その後、ホーロー浴槽の生産ラインを使用して、ホーロー黒板もできる様になり、現在も使用しています。(主流をなしている) |
明治後半~昭和20年頃迄の間、塗料は漆器の製法を参考として、生漆・砥粉・対馬石粉・胡粉及び、油煙・松煙墨・柿渋この様な材料が使われたと思われます。色は全て黒色です。 | |
昭和21年戦争が終わり、生漆の入手が困難となり、代用品として、カンバイ粉・ニカワなどを使用したが、納得のいく製品ができなかった為、各業者が単独で購入していた少ない資材を共同で受給することにしました。これが後に、全国黒板工業連盟の基盤となり、黒板のJIS化に連なりました。 | |
昭和27年、最初のJIS規格が制定されました。水成岩微粉末・漆・テレピン油・サイズ・ワニス・顔料・色は黒または緑色。この様な使用材料をもとに規格されました。 | |
昭和49年、良質の合成樹脂塗料の開発により、黒板用塗料も著しく品質の向上がみられたため、黒板用塗料の材料が、水成岩微粉末・着色材・合成樹脂塗料に、JIS規格が改正されました。 | |
現在、JIS規格(指定品目)JIS S6007研ぎ出し黒板を製造するにあたっては、改正後の塗料を使用することで、JISマークを表示することができます。 |
19世紀初頭、イギリスで、建築材料に使われる石灰岩で、硬いものに、線が引けることを知りました。 | |
19世紀初頭、フランスでは、石灰の粉末を焼いて水に溶かし、棒状に固めて使い易く加工したものが生まれました。これが現在のチョークの元祖の誕生です。 | |
19世紀初頭、アメリカでクローゼ工学教授が授業をやりやすくするため、大工さんと絵の具店にたのんで、黒板とチョークを作ってもらいました。 | |
明治6年、大阪の雑貨商、杉本富一郎氏により、初めて日本に輸入されました。その後杉本氏により、明治8年石膏を七輪で焼いた初の国産白墨を完成しました。 | |
明治26年文具ルートにのせて教師用チョークが発売されました。また、日清戦争時には、軍の戦略立案用として使用されました。 | |
(明治29年9月)(株)馬印 創業・業界では一番古い | |
明治末期、色白墨が誕生、しかし現在のものより質が悪く、色がついているのは表面のみで、中の芯の部分は白色のままでした。 | |
大正時代に入って、白墨が本格的に授業に取り入れられ、各社が製造を開始し、全国で数十のメーカーが乱立しました。 | |
昭和初期、アメリカで使用された炭酸カルシウム製のチョークが、昭和12年頃、日本理化学によって国産第1号として製造開始されました。 | |
昭和15年、丸公価格の設定。そして第二次世界大戦勃発により、原料の石膏が入手困難となり生産量が激減、メーカーを苦しめました。 | |
昭和21年、戦争が終わり、文部省が学校教育資材として白墨製造をすすめ、業界はふたたび活況を呈し、全国白墨製造協議会が設立され、JIS規格が制定されました。 | |
現在では、歯磨き材料にも使われている炭酸カルシウム製(人畜無害)の炭酸カルシウム製のチョーク(ダストレスチョーク)が学校で多く使われています。石膏製のチョークは日本文字が書きやすくきれいにみえます。材料の石膏は無害で歯科・ギプス・等に使われています。昔は豆腐のにがり変りに使用されていました。 |
製品名 | 日本工業規格 | 主成分 | 形状(1本) | 主な性質 | 比重 |
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炭酸カルシウム製 | 炭酸カルシウム | 長さ63mm質量8g以上 直径9mm以上 |
・粒子がこまかい ・長持ちするがかたい ・軽いタッチでよく書けるが音が高い ・細かい文字が書きやすい |
比重が重い | |
焼せっこう製 | JIS S 6009 | 硫酸カルシウム | 長さ80mm 質量4.5g以上 直径(太口)12mm以上 直径(細口)9mm以上 |
・密度が粗い ・タッチがソフト ・太い文字が書きやすい |
比重が軽い |
昭和20年アメリカでフェルトマーカーが誕生しました。同年、アメリカ進駐軍によりボールペンが日本に紹介されました。 | |
昭和28年、寺西化学が『マジックインキ』を製造し、内田洋行から日本ではじめてマジックインキが発売されました。 | |
昭和38年、ぺんてるが水性『ぺんてるサインペン』を発売しました。 | |
昭和41年、パイロットインキが『ケトン系中詰式マーカー』の製造を開始しました。 | |
昭和42年、日本で初めてホワイトボード(特殊表面加工のポリオレフィン系樹脂板)を発売するにあたり、ここにホワイトボード用のマーカーが誕生しました。その際イレーザー(ペーパー式)と、ホワイトボードクリーナーも生まれました。 | |
昭和48年パイロットは硬質ホーロー製ホワイトボードと速乾性アルコール性インキのマーカー(赤・青・黒銅色)を発売しました。 | |
昭和57年、直液式油性アルコール系マーカーが発売されました。 | |
平成1年、直液式油性アルコール系マーカーの大型が発売され、その後、形状変更・色数・品種など改良を加え、バリエーションを増やしています。 | |
平成7年、グリーンマーカーボード用カラーマーカー(油性顔料アルコール系)が発売されました。 | |
現在、マーカーインキは、ケトン系とアルコール系顔料インキがありますが、アルコール系顔料が主流です。1998年、より安全性を高めるため、新たに水性マーカーが仲間入りを果たしましたが、これからの商品です。 |
製 品 名 | 主 成 分 | 安 全 性 | 臭 い | 消 去 性 |
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アルコール系 | インキ 着色剤:顔料 溶 剤:アルコール系 |
毒性 殆どなし |
ソフト | 良 好 |
ケトン系 | インキ 着色剤:顔料 溶 剤:ケトン系 |
毒性 多少あり |
強 い | 良 好 |
・書きやすいこと。(描写性の良いこと) | ・筆跡(色)が鮮明なこと。(バラツキが少ないこと) |
・消去性の良いこと。 | ・消去カスが出ないこと。 |
・耐久性の良いこと。 | ・ドライアップが少ないこと。 |
・大きさ、筆跡巾等がユーザーニーズに合っていること。(扱いやすい) | ・安全性に優れていること。 |
昭和59年、通常のホワイトボードの利用価値を高めるため、コピーを可能とする書き消し可能なシートを利用した、5面巻き取り式電子黒板『かわら板』が誕生しました。これが、現在のファックス方式電子黒板の草分けとなりました。 | |
昭和61年、以前の5面巻き取り方式の欠点を改良した、画期的な電子黒板が4面エンドレス方式の『メディアボード』をはじめ、大手家電メーカーが続々と電子黒板市場に参入しました。これ以降各社の商品は、市場共多機能タイプと単機能廉価タイプに2分された形となっていきました。 | |
昭和63年以降、次第に激化する価格競争で、メーカー側は余分な機能を削除した電子黒板を発売しました。4面エンドレス及び2面式廉価版が主流となっていきました。 | |
全体的な市場規模は、毎年着実に伸びていったが、製品上・販売上弱い部分を持った企業は次第に減少していく半面、コンピューターと接続可能で、用紙も普通紙に印刷可能な電子黒板が誕生しました。 | |
電子黒板の全体的な市場はここ数年伸び率が安定しており、今後も継続するものと思われます。 |
馬印の黒板と白板は「ほうろう白板連盟基準(全国黒板工業連盟)」基づいて、確かな品質と歴史に培われた技術で生産されています。
正面・背面・側面その他
●スタンダードタイプ
●低コスト
●サイズが豊富
●多目的、場所も自由
教室の正面・講議室・ホール・扇形ホール
●窓側より採光で文字の見えにくさを防ぐ
●R角の反対側の人が見やすい
教室の正面
●窓側より採光で文字の見えにくさを防ぐ
教室の正面・特別教室
●書く人の背の高さに合わせられる
●上下することで、板面を有効に使える
●上に上げることで、なお見やすい
特別教室・階段教室
●書く面積が広い
●書いた文字を揚げ筆記の時間がもてる
●大きな教室で遠くの人にも見える
音楽室・視聴覚室
●スクリーンの組み合わせができる
●可動・固定に使い分けができる
●白板との黒板の組み合わせができる
●カガミを組み合わせ発声練習ができる
長所 | 短所 |
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・グリーン色のため、目が疲れにくく、見やすい ・チョークに馴れている、なじんでいる ・白いチョークで書いた字が見やすい ・歴史的に黒板に先生が馴染んでいる ・マグネットが使え掲示板替わりになる ・水拭きできる(ホーロー製) ・マーカーに比べてチョークの方が安い |
・汚れる(手、空気、回り) ・消しづらい(1回でよく消えない) ・黒板消しが汚い ・チョークの粉を吸い込むので不潔 ・細かい文字が書きづらい(チョークが太いから) ・書く音がする |
長所 | 短所 |
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・きれい(清潔感がある) ・マーカーで書いた色がきれい ・ペンタッチで書きやすい ・掃除が楽 ・消しやすい ・高級感がある ・マグネットが使え掲示板替わりになる ・粉汚れが少ない |
・光の反射等で目が疲れやすい※スチール製 ・油性マーカーを使ってしまう ・字のあとが残る ・粉受けに黒くマーカーのカスが残る ・マーカーキャップの閉め忘れによる無駄も出る ・チョークに比べ高価である ・表面がなめらかなため、すべる ・マーカーカスが服に付着した場合とりづらい |
使用する人にとって「書きやすさ」は、大切な条件の一つです。チョークがすべりすぎたり、余分な力を必要とするようでは、よい黒板とはいえません。適度な粗さは、光沢を防ぐためばかりではなく、書きやさのためにも必要です。
書かされた文字をくっきりた浮かび上がらせ、光らせない、ということが見やすい黒板の条件です。そして、「見やすさ」の中には、「目を疲れさせない・不快感を与えない」という大切な条件も含まれます。黒板の色や材質も大きな要素ですが、採光・照明・チョークの色・黒板の年数などでも大きく左右されますので、見やすくするための環境づくりも大切です。
手軽くきれいに消せることも、良い黒板の大切な条件です。きれいに消せない黒板は、文字を見えにくくします。この条件として、表面の粗さや静電気発生のため消しにくいこともあります。また黒板消しが早く損耗するしないも判定の要素といえなくもありません。この3条件をすべてクリアするためには古くなった黒板はできるだけ早くリフレッシュして下さい。
良い黒板の3条件でも述べましたように、文字の見えやすさは、さまざまな条件により大きく左右されます。生徒の視力・座っている位置・天候・時間・採光など、その時や環境に応じての文字の大きさや、チョークの色を変えて授業のできる先生はすばらしい先生に違いありません。そこで、このコーナーでは、見えやすい文字のポイント、「大きさ」と「色」の二つについて紹介します。
視力0.3の人は白いチョークを使い、黒板の正面7mの位置にいて、十画の漢字を見た場合250ルクスの明るさだと、5cm以上、100ルクスの明るさでは7cm以上の文字の大きさが認識可能な範囲という平均データです。ひらがな・数字・英字はこれより20%小さくしても見えますから、常に文字は7cm以上の大きさで書くように心掛ければ、すべての生徒が「よく見える」ようになります。
角度によって見え方の違い生徒の座っている位置によって、見えさすさ・見えにくさがありますが、通常の教室では充分に見えることが確かめられています。
チョークの色について暗めの色で鮮やかさが少ない黒板が文字を読み取りやすく、チョークの色との明るさの差が多い程、目も疲れません。現在、最も多く使われているダーク・グリーンの黒板は、白、黄のチョークが一番見えやすく、このあと赤・茶・青の順になります。白と黄はほとんど差がなく、時には黄のほうが見えやすい場合があります。また黒板から遠くに離れると茶より青のほうが見えやすくなります。色チョークを上手に使い変化を与えると、理解しやすくなり、また学習意欲を高めます。しかしノートに写す側は鉛筆一色で書くことが多く、あとでノートを見たときかえって分かりにくくなることもありますので、色チョークを多様しすぎてもいけません。色チョークは状況に応じて上手に使い分けてください。
黒板の上手な使い方表面はいつも清潔にしておくということも上手な使い方の一つだと思います。きれいな板面に接することは、先生ご自身が感じのいいものですし、見る方、生徒の側にも学習効果をはじめ、多々影響することも大きいとおもいます。清潔に保つ方法としては、黒板の取扱い説明書の「黒板を清潔に保つためのQ&A」を参考にしてください。
この表示を無視して誤った取扱いをすると、人が死亡または重症を負う危険が想定される内容を示しています。 |
この表示を無視して誤った取扱いをすると、人が傷害を負う危険が想定される内容及び物的損害の発生が想定される内容を示しています。 |
保守/点検について(文部省の学校環境衛生基準)
黒板の管理
定期検査は毎学年1回定期に行う。
定期検査は、次の事項について行う。
判定基準を超える場合は、板面を塗り替えるか、又は取り替える等の適切な措置を講じるようにする。
きれいな濡れ雑巾で水拭きし、ウエスで拭き取って下さい。
表面をきれいに保つためには週1~2回、定期的に水拭きしましょう。
水拭きの後は、表面が乾いてから使用してください。
良質のチョークを使用すれば気持ちよく板書きが出来、黒板も長持ちします。
(JISマークのついたものをお勧めします)
表面が破れていないものを使用して下さい。
粉のついた黒板拭きは電動クリーナーを活用して、たえずきれいなものを使用して下さい。
とれない場合は、ベンジン等で拭き取って下さい。付着したものによっては、とれない場合があります。
金属が付いたマグネットは表面を傷つけやすいので注意して下さい。なるべく、着磁面が樹脂コーティングされたものや、ゴムシート状のものを使用して下さい。
白板専用のマーカーペンを使用して下さい。(油性クレヨン・油性ペン等・水性のマーカーペン等は、不可)
雑巾で水拭きし、きれいなウエスで拭き取って下さい。書いたあとはなるべく早く消して下さい。
中性洗剤でよく洗い、乾かしてから使用して下さい。イレーザーは、たえずきれいなものを使用してください。